不動産業が業績を支える
今年も残り1ヶ月となりましたね。
この時期になりますとお酒の席が増えていきますよね。
1杯目のお酒はなにを選ばれますか?
半数以上の方がとりあえずビールという方も多いかと存じます。
実は、ビールで有名なサッポロは、ビールだけでなく
不動産のサッポロへと変貌を遂げていることご存知でしたでしょうか。
2017年12月期に連結経常利益が前期比6%増の203億円を見込むサッポロホールディングス。
達成できれば、前期に続いて2期連続での最高益更新となる。
株価も5月に付けた年初来高値(3340円)からはやや安くなったとはいえ、依然として09年7月以来の高値水準を維持している。
さぞかし市場関係者からの覚えがめでたいと思いきや、アナリストからはさほど好意的な評価が聞こえてこない。
問われているのは食品会社としての覚悟だ。
業績好調を支えるのは不動産事業だ。
ビール工場跡地に開業した商業施設「恵比寿ガーデンプレイス」を筆頭に、都心部に保有するオフィスビルやマンションの賃貸収入が伸びている。
17年12月期のセグメント利益は110億円と、前期から7%伸びる見通しだ。
今期は主力物件の稼働率が高いうえ、東京・銀座で開業した商業ビル「GINZA PLACE(銀座プレイス)」が通年で寄与する。
サッポロHDの時価総額はおよそ2450億円。
野村証券の藤原悟史アナリストによれば、このうち約1300億円が不動産事業の貢献によるものと試算できるという。
問題は不動産以外の事業の評価だ。
時価総額から不動産の貢献分を差し引くと、ざっと1150億円と逆算できる。
野村証券の藤原氏は「営業利益予想などからはじくと、不動産以外の評価は2000億円程度あってもおかしくない」という。
つまり、ビールなどの「本業」は市場からかなり、過小評価されているというのだ。
「本業」の中心である、国内ビール事業は健闘している。
9月12日に出そろった8月のビールの販売数量は、アサヒグループホールディングスが9%減、キリンホールディングスが4%減だったのに対し、サッポロHDは3%の減少にとどめた。
記録的な長雨が強烈な逆風となるなかで、サッポロHDはこれまで手薄だった西日本地域でシェアを拡大。
「黒ラベル」の家庭用缶ビールの伸びが酒類販売全体を下支えした。
ではなぜ、評価されるのか。
要約すると「せっかくの不動産の稼ぎを、食品事業の強化に生かせていない」という指摘に行き着く。
例えば、8月に米国で94億円で買収したアンカー・ブリューイング(カリフォルニア州)。
120年を超える歴史を持つ老舗クラフトビール会社で、尾賀真城社長は「生産拠点、物流拠点を手に入れたことで北米のビール事業の体制を強化できる」と力説したが、アナリストは「米国の生産拠点を得る利点はあるが、スケールが小さすぎる」(みずほ証券の佐治広氏)と手厳しい。
アサヒやキリンHDが海外で大型買収を仕掛けているだけに「サッポロHDの評価を高めるに足りる特段の材料にはなっていない」(佐治氏)。
昨年9月に傘下に収めた「神州一味噌」への評価はもっと辛辣だ。
「ビールとは取引先も搬送方法も違う味噌の会社を買って、シナジーがあるのか」(国内証券のアナリスト)といった声すら聞かれる。
サッポロHDは昨年11月に、20年12月期を最終年とする中期経営計画を発表。
「酒・食・飲への戦略投資」を掲げて同分野の強化を打ち出したが、野村の藤原氏は「大胆なM&A(合併・買収)をしない限り、利益目標を達成するのは無理だろう」と指摘する。
不動産で稼ぐ収益構造が非難されているわけではないし、規模の大小がM&Aの成否を左右するものでもない。
しかし、不動産株としての評価を脱するため「酒・食・飲」の強化をうたう以上、サッポロHDはもう少し市場の声に耳を傾ける必要があるかもしれない。
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