2016.12.13

預金にもリスクはある

投資未経験者や投資初心者からよく、「投資はしたいけれど、失敗はしたくない」という相談をいただきます。

「失敗」とはおそらく、損をするということだと思いますが、この質問をいただくと本当に困ってしまいます。

「損をしない投資」などは存在せず、「絶対に儲かります!」という言葉ほど危険なものもありません。

絶対に損をしたくないなら、投資には手を出さないほうが良いでしょう。
実際に「損をしたくないから投資はしない。やっぱり預金が安心」という方もたくさんいます。

ただ、少しだけ見方を変えてみることも大切です。

たとえば、そもそも損とは何か、銀行に預けておけば本当に損をしないのか、と考えてみると意外と難しい。

名目上の金額の減少が「損」だとすれば、預金は損をしない貯蓄方法です。
100万円を預けておいたのに、いつの間にか99万円になってしまう、ということはありません。

でも、預金している間に物価が上昇したら、実質的には損をします。

とある商品の価格が100万円から105万円に上昇すれば、預金残高は100万円のまま変わりませんが、実質5万円の損をしていると考えることができるからです。

機会損失

また、仮に100万円を105万円にする手段があるにもかかわらず、100万円の預金のまま持ち続けたとすれば、5万円を(得るチャンスを)失っているのだと考えることもできます。

経営や会計の世界では、ほかの手段を選択していれば得られたはずの利益を「機会損失」といい、損の一種としてとらえます。

「損をしたくないから投資はしない」と言いながら、実は損をしていることに気づいていないだけだとしたら、知らない間にお金を失っているようなものです。

もちろん、株式投資をしようとすれば、もっと大きな損失を被ることもあり得ます。
いたずらに、そうした投資をお勧めするつもりはありません。

とはいえ預金は、もう20年近くほぼゼロ金利です。

例えば今から約40年前の1975年には、銀行の普通預金の年利は2.5%、郵便貯金(普通)は3.8%、郵便定額貯金は7%ありました。

本来は、銀行に預けられたお金が銀行を介して企業などに融通され、企業はそのお金でビジネスをして利益を得て銀行に利息を支払い、銀行から預金者に利息が支払われることになります。

ゼロ金利が約20年も続いているということは、銀行が果たすべき、一般から預金を集めて、企業などに対してしかるべき融資をするという金融機能を果たせていないということにほかならないでしょう。

マイナス金利によって、それが少しでも変われば良いのですが、あまり期待できないのではないかというのが正直な感想です。

また、世界の人口はまだまだ増加の一途をたどり、世界全体の経済も成長しています。

そうした点に目を向けず、預金にしがみついているのだとすれば、大きな損をしてしまう可能性を否定できません。

さらに付け加えるならば、お金が必要なところにお金を託すことで、世の中にさらなる価値がもたらされるようにすることが投資の本質です。

それによって世の中が成り立ち、発展しているのであれば、投資とはそれだけの意味があるお金の遣い方なのだといえます。

何事にもリスクはある。

それぞれのリスクを理解し、自分が負っても良いと思えるリスクはなんなのかを見極めることが大切です。