2016.08.16

意志力と投資の関係

数年前から、急速に研究が進んでいる分野として、「意志力」というものがあります。

これは、「スタンフォードの自分を変える教室」というベストセラーでも取り上げられていますので、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。

簡単に言えば、

①人間の意志力は限りがある(有限である)

②そのため、何かをするのに使用すると、代わりに何かができない

ということです。

これは、古来から言われる「二兎追うものは一兎も得ず」の正体でもあり、
マルチタスクの弊害の罠(人間の意志力は無限だと考えると、自分は何でもできると思ってしまう)に陥ってしまう錯覚の原因でもあります。

本当は、人間はそんなに多くのことはできません。

プロ野球選手として一流になりながらもサッカー選手でもワールドカップに出る、とか、プロボクサーとして活躍しながら合気道の黒帯を極めるとか、普通に考えれば無理なことが分かります。

これと同様に、自分自身の本業で一流になっていきながら、投資の世界でもプロ投資家と同様のリターンを得る、とか
本業でトップセールスマンになりながら、FXや株式のデイトレードの世界でもプロのレーダーと同様の成績を求める、とか
そういうことはできないのです。

私のお客様で、営業マンとしては非常に優秀な人でありながら、
管理職にまつりあげられてしまったがために、苦手な管理をすることが嫌になり、
ある一流企業を退職されてしまったお客様がいらしゃいます。

このような方は、マルチタスク幻想を考える「企業側」の犠牲になってしまったのです。

そして、企業も、優秀な人材を手放す、という犠牲を強いられ、LOSE-LOSEになってしまった。

このようなことを、投資と本業の関係でやろうと考えている人が多いようです。

プロの大家さんが書いた書籍を読んで、それと同様のこと(専業大家さんだからこそできたこと)を夢見ながらも、本業での出世も望む、という考えを持っている人たちです。

このような方々は、人間の「意志力」を過信していますから、遅かれ早かれ、早晩破綻します。

また、人間の意志力を酷使するような仕組みを作っている組織や企業も同様です。

人間は何でもできる、と考えるのは、「万能幻想」であり、それは心理学的に言えば、幼児性の現れです。

逆に、人間の意志力が増えるような仕組みを作っている組織や企業は発展します。

これは、「投資のスキームづくり」も同様です。

このブログを読んでいただいている聡明な皆様は、そのようなことがないよう、お気をつけくださいませ。