2012.08.31

耐震偽装問題への対応で高評価

耐震偽装への対応
――: 耐震偽装問題への影響はいかがでしたか。
篠原: この問題が公になった段階で、パッシングはたくさんありました。しかし私が国会でお話をさせていただいた後は、批判が1か2に対して、8か9の割合で励ましをいただきました。それは責任を果たしたことに対する評価などで、取引先からも私が発言した通りにやってきたことで、評価していただいています。

――: その後の営業活動にも影響はなかったと?
篠原: 現場では、どうしてこのような問題が起こったのかを説明すると同時に、今回のことを機に、二度と同じような問題を起こさないように構造計算については、当社が選んで承認した第三者専門機関で行い、なおかつ、別の第三者検査機関へ再度構造計算をお願いするなど、全ての物件についてダブルチェック体制を行うようにしました。このことをしっかり説明し、ご理解をいただいています。

耐震偽装問題が昨年11月に起きて以降、今年2月までの業績は、前年同期と比べても、ほとんど変わっていません。この間は新聞等による広告媒体活動を自粛していたので、それまで月間400件くらいあった資料請求やお問い合わせが、100件くらいになりました。一方で既存のお客様から複数の物件を持ちたいというご要望を多数いただきました。“取り合い”のような状況になっているので、余っているのならすぐに商談に来て欲しいといった具合で、改めて当社のビジネスモデルに対する評価を再確認することができました。今後も「安心して暮らせる住まいづくり」と「安心して任せられる資産運用システムの構築」に全社をあげて取り組んでいきます。

――: 解体に至ったのは何物件ですか。
篠原: 5棟は現在解体中で、この他の2棟のうち1棟は6月末までに解体を終え、残り1棟は補強工事で対応できるので、その方向で対処しています。今後も安全に配慮して、無事に解体作業が完了するようにしていきます。それから今回の事件に絡み、シノケンが買い戻した物件は3月末ですべて売却契約を終えました。

――: 解体費用など、想定外の出費もあったでしょう。
篠原: 解体費用と退去費用を今期の特別損失に引き当てるので、今期決算はダメージがありますが、来期までは持ち越さず、今期中に処理を終えます。

――: 借り入れの金利などはどうされました。
篠原: そういう細かいことを言うより、とにかくあの状況で資金を出していただくことの方を急ぎました。金融機関からすれば、篠原英明という人間は姉歯元建築士を知っていたのではないか、グルなのではないかという疑念が当初あったと思います。この点を何度も確認されました。私は、その都度、本当に知らないということを説明し、信頼していただくことができました。木村建設さんとは、発注元としての関係がありますが、それ以外のところとの結びつきはありません。

――: 東京に進出してきたときの知り合いは、当初木村建設しかなかったんですね。
篠原: 元々木村建設さんとは福岡でお取引があり、先に木村建設さんは東京支店を出し、軌道に乗せていましたので、支店開設準備中には東京市場について色々と相談に乗っていただきました。当社が01年に東京支店を開設し、マンションの受注契約がとれたときにはお返ししなければと思っていました。筋を通す意味でも仕事をお願いしていたんです。

――: その後、姉歯氏や破綻した木村建設に損害賠償請求をするとのことでしたが。
篠原: 木村建設さんの管財人に対しては3月末までが期限だったので請求し、姉歯氏についても今、準備をしている最中です。その他の関係先については現時点では、無事に解体作業を完了させることが先決と考えていますので、その後の状況を見ながら十分検討して適切に判断させていただきます。今回の事件は個人的な見解になりますが、それぞれにやはり応分の責任はあると思っています。それが1割か2割なのかという問題はありますが、それは国や裁判所が判断し、その結果に当社は従いますが、ゼロということはないだろうと思っています。

素早い対応がすべて
――: 今回の問題で危機管理対応として、シノケンさんは失ったものより、得たものの方が数倍大きかったですね。
篠原: 太っ腹すぎて、お前は本当に大丈夫かと言われました。(笑)。でもそうしないと、先に進んで行かないと思ったからです。購入されたお客様が一日も早く何とかしたいという気持ちのときに早く対応していくことが先決だと考えました。区分所有のマンションは1人でもトラブルになったら、買取りが進みませんし、売却もできないわけですから。そうなると私が考えた今回の資金調達と返済のスキームが崩れてしまいます。退去費用についても、1件20万、30万というような枠を設けると長引きますし、入居者の方々へのご迷惑を考えるとできるだけご希望に添えるような対応をしました。お客様は被害者であり、当社は加害者です。一方、姉歯氏やその他の関係先に対しては当社が被害者です。いろいろ言いたいことはありましたが、現時点でそれをあえて言う必要性はありませんのでね。

耐震偽装問題で一躍有名になったシノケン。しかし、ヒューザーとは対照的に、対応は迅速で適切だったために、事件が致命傷にならなかった。そんなこともあって、失礼ながら会う前から、非常に興味があった。正直な人、というのが第一印象で、話をするうちにそれが確信に変わった。経済的に失ったものは少なくないが、その正直さで逆に得た信用も大きかったように思う。ビジネスモデルは面白いし、これからの飛躍が期待される。

経済界
平成18年4月18日発行

CONTENTS

INFORMATION