2012.08.31

「耐震偽装」克服 アジア展開

不動産業のシノケン(福岡市)は、耐震偽装事件への対応が一段落し、業務提携を次々と決めるなど、攻めの姿勢に転じた。事件の逆風を追い風に変えたともいえる。篠原英明社長に今後の展望を聞いた。(白井貴久)

――: 耐震偽装への対応は。
「七つあった問題の物件のうち、六つについては建物を壊し、土地の売却も終わった。残りの一つは補強案を施主側と協議している。(予定よりは)少し遅れたが、問題なく対応できた」
「再発防止に向け、『人任せにしない』『ダブルチェックをする』ということを心がけている。構造計算書を二つの検査機関で点検するようにしたほか、全国各地の物件の工事が適正に行われているかチェックする工事統括部を7月につくり、万全を期している」


――: 経営への影響は。
「耐震偽装問題に対応するための資金は、金融機関からの借り入れなどで対応できた。営業体制の立ち直りも早く、本業への影響はほとんどなかったといってよい。2006年3月期決算では、売上高、経常利益とも、過去最高の数字をあげることができた」


――: 最近、他社との提携が目立つ。
「耐震偽装の問題にきちんと対応したことで、周りの目が変わった。『この会社とだったら手を組んでもいい』という企業が増え、提携話が多く寄せられている。4月には九州リースサービス、7月には(不動産投資会社の)アセット・マネジャーズと提携した」


――: 香港の不動産会社に出資もしたが。
「日本では、不動産ファンドが競って土地を買っているので、取得価格が上昇している。資金の投資先の間口を広げるという意味で、海外に目を向けた。日本で手掛けている不動産流動化のスキーム(枠組み)を現地で展開する予定で、年内に中国で現地法人も作る予定だ。マレーシアやベトナムなどアジア全域を(マーケットとして)見ていきたい」

【読売新聞(朝刊) 2006年9月5日付】

読売新聞
平成18年9月5日火曜日付(朝刊)

CONTENTS

INFORMATION